五感で感じる自然の造形 阿寒の森間伐材アート

自然美しい北海道の国立公園「阿寒湖」

その森を護るために伐りとられた木々たちを<間伐材>と呼びます。

阿寒湖に住むアーティストたちが間伐材に新たな役目を与え、皆さんに自然の厳しさ、豊かさ、優しさをお届けします。

木彫り一筋を極める 
木彫作家 渡辺 澄夫


木彫以外は考えられない。
だって、これ(制作中のフクロウ)だって全然まだ納得いくものが彫れていないし。もうそんな、目をよそにやっている暇はないっていうか。課題は乗り越えてないですよ。まだまだ。
まぁでも面白いから。それを追及していくのが。幸せですよ、すごい。まぁ乗り越えるとかどうとか分からないけど、これをやっていること自体が幸せです。


Q.アーティストとして活動を始めた経緯やきっかけは?

僕は栃木県出身で、来たのは37年前。木彫がやりたくて北海道に来たんですよ。雑誌に木彫を学びながらアルバイトが出来るというのをみて、思い切って来ちゃったんです。最初は文字彫ったり、小さいのから作ったりして。
以前から北海道には旅行で何度か来ていたけど、大好きだったんで、とうとう住み着いてしまいました。

Q.大きい作品を彫るようになったのはいつ頃から?

10年くらい前からですね。大きい作品はなかなか時間かかるから。ハイシーズンは接客しながらになってしまうので、大きな作品に取りかかれないんですよね。ゆっくり彫れるようになるのは10月ぐらいからかな。

Q.これから挑戦していきたいことってありますか?


ありますよ。頭のなかに彫りたいもののイメージはたくさんあって、やってみたいこともいろいろあります。

動きのある動物を掘ってみたいですね。あと、人間も彫ってみたい。例えばアイヌの古式の舞踊の姿を彫ってみたい。
一瞬の動きを彫るのは難しいですよね。もっと躍動感がある作品作りをしていきたいと思っています。

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阿寒の自然に囲まれて作品作り
ナチュラルクラフト作家 石川 良

阿寒湖の大自然をいろいろ散策して「こんなものがあるな〜」「おもしろいな〜」と、見つけるたびにハマっていきました。
365日、ずっとこの自然の中にいられるっていうのがいいですね。素材となるものに気づけるタイミングがたくさんあるというか。
楽しいですね。

Q.どういったところから着想を得て作品作りをするのですか?


まず、テーマを決めるっていうところから入って。たとえば、クリスマスの雰囲気で、ドールハウスの雰囲気でって感じです。

親父とふたり展をやったときは、海をテーマにした作品展だったので、それに合わせて海のものを作ろうっていうことで灯台つくって。山の素材で海を表現したっていう感じです。

Q.作品を作り上げるのにどれくらい時間がかかりますか?


2週間から1ヵ月くらいが多いですね。
半年ぐらいかけた超大作を作りたいなっていう、想いはあるんですけど。お店自体も作品でなので、そんな雰囲気にしたいなと思っています。まだまだなんですけど。

Q.作品作りをするときに気を付けていること


とりあえず自分が面白いなと思うところからスタートして、そのあとにお客さんがこれみたらどう思うかなって考えたりとか。そういうのを考えながらやりますね。自分ばっかりの考えだとめちゃくちゃになるんですよね。ちょっと一歩引いて、客観的にこれってどうなのかなっていうところを考えて。
それに対するお客さんの反応を見るのも面白いですけどね。伝わったなとか、ちょっと反応薄いな、とか。
そういうのも面白さの一つですね。

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彫るだけでなく、何かを伝えていきたい。
木彫作家 瀧口健吾

阿寒湖は木彫と踊りの故郷と呼ばれているので、ここいる人がここにある木で掘るのはやっぱり素晴らしいことだなって思います。
昔の阿寒湖は、店先で木彫りをやることが多くて、街中に響くノミの音で誰が何を掘っているかが音でわかるぐらいだったんだよね。阿寒湖は木彫りが上手な人が多いし、その作った人に会えることも非常に貴重!


Q.何を掘っている時が楽しいですか?

自分の好きなものを掘る時かな。

例えば、角材をずっと見て作品が思い浮かべる。店の中で座って、それ考える時間が好きですね。木を見てから構想するんですよ。

好きなものを掘っている時は完成が楽しみで仕方がないんです。そして早く終われ!と思うんです。

Q.好みの木材はありますか?

イチイも掘るけど、カツラが一番大好き。掘りやすくて柔らかい木だから。

綺麗な節もないような角材が大好き。綺麗に製材されたものを「これで何を掘ろうかな?」とワクワクしたりしますね。

Q.阿寒間伐材アートについて


間伐材アートを始めたのがすごく面白い。阿寒湖の木を使って作れるのは特別感があるよね。

地元の切らないといけない木を使って何かができるし、そして作る人、こういう人がいるんだよって知ってもらえることにも繋がるから。
作品と人とその地を繋いで、続けていかなきゃいけないものだと思うんです。

ただ木を彫っているだけではなく、何かを伝えればいいかなと考えています。

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阿寒湖は木彫り仲間がたくさんいて、木彫り環境がとても良い
木彫作家 平良秀晴

阿寒湖の環境が自分の肌にとても合うんです。

京都の実家もかなり田舎で、田んぼばっかりですけど、阿寒湖の田舎感とはまた別タイプ。

今後も阿寒湖に居続けて木彫りをずっとやっていきたいと思っています。



Q.木彫りは仕事?趣味?

仕事でもあり、趣味でもあるかな。とにかく彫ることが好きで、その時間が幸せだね。

木彫りは長時間に座ってやるので、好きじゃないと続かない物だし。木彫りを上達させるには、とりあえず彫ってみること。

阿寒湖は木彫り仲間がたくさんいて、木彫りの環境がすごく良いところもいいよね。

Q.木彫り作家になったきっかけは?

35年前に阿寒湖でアルバイトして木彫りを学んだのがきっかけですね。それまで木彫りをやったことがなかったんだけど、もともと興味があったし、北海道が好きで何回か来てて。そんな時、アルバイトニュースで阿寒湖の募集があってきたんです。

最初は定住するつもりが全くなくて、3ヶ月ぐらいの滞在かなと思ってた。でも木彫りが面白くなって居続けて、気がついたら定住してました。

Q.今後やりたいことはありますか?

ただただ木彫りをずっとやっていきたい。彫り続けたい。

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阿寒湖でロマンを掲げる
木彫作家 桐常夫

美術家だから、すべてやる。空気もやる。彫刻家だから、現代彫刻。地球上にある素材は全部使う。見たことないものを作るのが仕事なんだ。

Q.阿寒湖にいる理由は?

ここで生まれて、ここで育っているから。自然の成り行きで作っているって感じかな。家がね、元々大工で建築やっていたから、木に非常に親しみがあったね。

阿寒湖にはそういうものを作るロマンがあるから。
作る側のひともメッセージっていうものがないと生き残れないの。

伝えるものがない人間ていうのは、ただマネしているだけ。。メッセージがある人間だけが生き残れるんだよね。


Q.最初から木彫りなんですか?

いや、なんでもやる。美術家だから、すべてやる。空気もやる。彫刻家だから、現代彫刻。地球上にある素材は全部使う。いわゆる見たことないものを作るのが仕事。
日本の美術の歴史っていうのは、1000年以上ものを表現してきた。
その中には一応ルールみたいなものがあるの。ルールがあるっていうことは、いわゆる同じものをマネしちゃあなぞるだけになっちゃう。だから斬新なものを作っていかなければいけない。そうでないと評価基準にならないし、評価できないよね。

Q.これから挑戦したいことはありますか?


木彫りでなんかきっかけを作ってね、一気にそれをモノにするというか、そういう野心がある。現実的にはこの木を利用して、素材を組み合わせていく。今までやらないアプローチをできる可能性はある。

価値観を変えていく。それは大変なこと。我々一代じゃできない。

身近にいると良いか悪いか分からない。なんかの情報でもって良い悪いとか。

なんかのきっかけで見えるときがある。そのきっかけを探す。非常に単純な仕事だと思う。全然難しいことではなくて。自然で出会うか出会わないかみたいな。その辺だと思う。

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仲間と共に阿寒で彫る
木彫作家 岡田実

木彫りをする人たちがたくさんいて、その人たちと交流しながら、切磋琢磨できる環境にあるっていうのはありがたいよね。

彫っている時は自分との戦いになるけれど、木のことを一緒に語っていられる友達がいたり、作品を見せ合える仲間がいる環境はとても楽しいですよ。

Q.阿寒湖に住んでモノづくりをする意味はどこに感じますか?


ここでやる意味というと、もう完全に自分がこの土地にホレてしまったというところかな。

じゃあ何に惚れたかというと、やっぱりここにある自然の美しさ。それを身近に感じながら生活していられる、生きていられる、ということがこの土地がすごく良いと思ったところ。

木彫りの伝統がずっと受け継がれていて、その中のひとつに自分がいられるっていう感覚もいいなと。親方というひとたちから受け継いできて、次に渡すのが自分の仕事の一つだと思えるし。その人たちが愛してきた阿寒を自分も愛しているわけだから。木彫りをやるんだったらここしかないんだなぁっていう想いがあるよね。

Q.作品のプロセスはどこから?


新しい作品を作るって言っても、全然違うものを作るタイミングはなかなかないから。
イタを作るのであれば、そのデザインどうしようかなと、ちょこちょこ空いている時間にラフに画をかいてみて、この雰囲気いいなってなったら、それをきっちりとデザインとして描く。
描いたものを彫っていくんだけど。俺が描くのって絵じゃなくて図なんだよね。設計図描いちゃってるんだよね。だから、描き終わったときには彫る段取りまでは全て終わっていることが多いから、あとはもう彫っていくだけ。
彫ってみた上で、ここは違ったな、ここはこう彫った方がカッコいいなって、その時随時修正していったりだとか、一枚目彫り切って二枚目で修正したりだとか、そういうことをやっているかな。
あんまり器用じゃないから、トライ&エラーで失敗してみないとわからない。彫ってる途中でもちょっとずつなんていってるけど、ほとんどそんなことにならなくて、一回作り切って結果を見た時に、ここ違う、ここも違う、ここはこうした方がいい、デザインはこうじゃなかった!とかを描き直して、もう一回設計図に修正入れての「ハイもう一回」みたいな。簡単な修正だったら頭の中で直すこともあるかな。

想像できて、どんどん彫っていける人ってうらやましいよね。

Q.阿寒湖の未来について



自分が親方や先輩から何かを受け継いだ限り、それを次にバトンタッチする、次に渡していくっていう役割がね、自分にはあるだろうと思う。じゃあそれを作り出すために何ができるかなっていったときに、作家の集団、コミュニティを作っておきたい、という想いは持って活動している。それが今であれば「阿寒の森間伐材アート展」というカタチでチーム化していて、そこに若い作家の仲間が集まることでいっしょになにかも出来るし、作品を出し合うことで、相手の作品を見るチャンスができると考えています。

仲間と一緒に切磋琢磨する空間があるのが、自分にとって木彫りをしていく環境に大切だって思っているから、その空間を次の世代に残していきたい。
どんどん人は減っていくんだけど、じゃあ1人よりもやっぱり2人の方がいいし、3人いてくれればその中で何かが起こるし、そういうコミュニティを阿寒湖の中に作っておきたい。
その為に活動していて。
偶然、前田一歩園財団さんの方で間伐材を、阿寒湖でとれた木を譲ってくれるっていう話になってきたときに、それを最初は一歩園さんに見せるために、ちょっと集まってアート展をやろうかってなったんだけど、それがどんどん発展して、もっと大きな形で「もっと釧路の人に見てもらえたらいいよね」、観光協会であり、釧路市であり、色々なところがこの活動を良いよねっていってくれて協力してくれてそういう風になってきてるんだけど・・・。それもすべて、この土地に木彫りという文化をちゃんと残しなさいって言ってもらってる感じもするからね。そういうその皆の想いをちゃんと汲んでやっていくっていうのが大切だなと思っているんです。

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木の良いものも悪いものを全部受け止めて、そこで自分の思いを彫らせてもらって、良いものができたら最高だなと!
木彫作家 半田真之

木は単なる材料だと思ってなくて、森を作って、多くの命を守ってくれる存在だと思う。その生きていく上の過程で、節や割れができてて。そういう木の痕跡、木の生きた証として残したいと思って、それで節や割れをうまく活かせるように作品を組み込んでいきたいと思っている。

Q.木彫りの技術はどうやって学んだのですか?


教わる人がいなくて、今までずっと独学でやってきました。

阿寒湖は木彫り作家がたくさんいて、作品が並べられているところも多くて。そういうとこに行って観察して「どうやって掘るんだろう」と参考にして、試行錯誤してやってます。

そういう意味では、独学で木彫りをやっている人にとって、阿寒湖はいい環境かもしれない。実際掘っているところは見れないかもしれないが、お手本のものが多くて、間近で見れるのがいい。「これはどういう道具でどういう掘り方でやってんだろう」と想像するのが楽しくてしょうがないんです。

参考にしたものを自分の手で実際に試してみたり。やっぱ違うなと思ったら、それはそれで自分なりのものを見つけたり。ちょっとずつ自分なりの作風なりを探ってますね。

鳥が好きで、それを題材として掘ることが多いんです。自分の掘りたいデザインを考えて、それを形に出して。やっている途中に、「これ無理か」と方向転換することもあるけど、そういうの考えながらやっていくのが楽しいですね。


Q.作品を彫るときの注意点やこだわりは?


2つの痕跡を大事にしています。
木の感じを残す「木の痕跡」と「道具がつける痕跡」

木の痕跡というのは、木の特性・例えば木目が綺麗だったり、年輪や色の綺麗さとか、それ他にもふしや割れとか、いろいろ木の性質があるので。見た目がこれダメというのはずっと納得いかなかったんですよね。なので、節や割れのように人間が負の要素だと思っているものを大事にしたい。そういう木の痕跡、木の生きた証として残したいと思って、それで節や割れをうまく活かせるように、作品を組み込んでいきたいと思っている。
木の一生を少しても感じ取れるような作品にしたいですね。「この時に節ができたんだなとか、こういう割れ方というのはこういった場所で育ったかな」のように。最近は、作品を触って年輪を感じられる掘り方をやってます。

他の作家と違って、丸太で掘ることが多いです。普通丸太は割れやすいので、あんまり愛用されない。逆に丸太を使って、割れたりすることが多いが、より多くの木の痕跡が残っているので。もっとデザインの中に、われを組み込んだりできたらなと考えています。

「道具の痕跡」というのは、彫刻刀やノミは今になると当たり前にあるが、元々はなかった。誰かが考えて、使っていくうちに試行錯誤して、進化させて工夫して、今の道具になった。すごい歴史があるものですよね。

道具は縁の下の力もちみたいな感じ。完成作品から見えないが、でも道具たちはすごいから、使った道具たちをわかってくれるようにしたいなと。

Q.作品を通して伝えたいことはなんですか?

最近は「絶滅」というキーワードにスポットを当ててます。
絶滅は種の死であると思うので、どの種もいずれ起こること。ただ人為的に引き起こしたり、早めたりすることは違うな。自分本位で、他のことを無視してやっていくと、歴史でみてもやはり絶滅が起きちゃう。そういうところはやはり問題があるかなと思う。

大きく広げると、今は戦争があるけど、そうのも自分さえ良ければとか、自分本位という部分が根っこにある気がする、そこに問題を感じる。そこは絶滅危惧種とリンクしているかもしれない。それで、絶滅種を調べて掘りたいと思ったんです。

最近彫ったものは、16,17世紀にモーリシャス島で暮らしていた鳥。モーリシャス島はアフリカの隣にあるちっちゃい島で、絶滅の原因は解明されていないが、人為的な原因も考えられる。人に乱獲されたり、持ち込んだ動物にやられたり。はっきりした原因はわからないが、少なくてもその可能性があった。この鳥は絶滅の象徴みたいなものかなと。

この鳥のはっきりと分かる姿の資料がないんですよね。昔は写真がなくて、絵と文字の資料しか残っていないんです。絵を見るとすごい種類があって、描き手によって全然違う。絵の他に頼りになるのは文献や記事。それでもすごい細かい描写でもなく、主観なところもあるから、人によってかなり変わる。骨格標本は何個が残ったが、アウトラインがわかったとしても皮膚の感じがわからない。正解が全くわからないので、集めた資料を組み合わせて構図を考えます。なので、これがほんとの姿がどうかわからない。今もぴんと来ない部分もあるので、もしかしてこれから作るときにまた変わるかもしれない。


組み合わせする時には必ず絵を描く。でも描いているうちに新しい資料と照らし合わせたら違う部分も出てくる。それも実は数年前から彫ろうと思ってたが、構図が全然定まらな買ったので、掘れなかった。ただし、こういう風に続けたら掘れないと思って、とりあえず現段階でまとめあげた構図で作ってみた。また完成形ではないかもしれない。本物にどれほど近いかどうかわからないけど、近ければいいなと。

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今、一番やったらいいことと、やりたいことこのタイミングだなということが重なっていることを選んでやっていきたい
絵描き 井上綾子

自分の気持ちがワクワクすること以外やらない。その気持ちでいると、出会う人とかも、鮮度がある状態でお互い出会って、そこから何か面白いことができるではないかということが増えてきましたね。

Q.今の活動に繋がったきっかけはなんですか?


物心ついたときから絵を描くのが好きで、ずっと絵を描き続けてました。大学時代から人の立体・顔を作るのが好きで、仏像とか、人体も書いてました。

阿寒湖に来て、木彫りが非常に有名で作り手がたくさんいるが、絵画やっている人は少なかったですね。絵という一つの要素は、阿寒湖にもう少し増やすことができるかなと思っています。それが自分なりの役割かなと。

アイヌ昔の習慣の素材を、木の皮など自分の興味の向くまま、やってみようかなと考えています。落ち着いたら、木彫りもやりたいですね。

阿寒湖に来た頃は、土地に慣れなきゃ、アイヌ文化に馴染まなければ、店を成り立てさせなきゃとかに一生懸命だったけど、いろいろ手を出した時に、大変になってしまって。なので、やりたいこととやらないことを決めました。
歩む道は違ったとしても、いいタイミングで出会ったので、人の展示を手伝ったり、映像作家さんに町を紹介したり、今後どうしようと迷っている大学の後輩と北海道回って、今度阿寒湖に滞在したら作品作ればいいんじゃない?という話をしたり。
人といいタイミングと出会えるようになったのがすごい新鮮で嬉しいです。


Q.制作活動と向き合うときに、意識していることは?

もの作る時、すごく中身を集中しないとだめですね。

動物を描くにしても、書いているものに対して誠意を持って描けているかを確認しますね。例えば、オオカミを描くにしても、人類が絶滅させたもので、このオオカミは何を人に伝えたいかなとかを考えたりしながら作品を作ってます。最低限のラインで、作品には必ず命を持たせるように描くことを決めてます。

Q.作品のテーマについて

実は阿寒湖来る前に、動物はほとんど描いたことがなかったんです。でも、注文がないときにずっとフクロウやキツネなどの動物の絵を書いていて。そのおかげで、動物描けるようになったんです。
北海道やアイヌ文化に溶け込めるので、動物を選ぶことが多く、今は動物を主に書いているんですが、今後は人物も描きたいですね。

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色で表現するものではなく、凹凸で表現する。光と影がはっきり見せられるように気をつけている。
木彫り作家 牛島隆弘

ありきたりのものではなく、お客さんの印象に残るものを彫っていきたい。

Q.木彫作家としての活動はいつからですか?


新千歳空港のお土産屋さんの木彫りを見たり、地元や北海道にもたくさん掘り師がいるので、そこで興味を持ち始めた。そして気づいたら、阿寒湖に来てました。
元々、趣味で木彫りやっていて、家の中にもコーナーを用意していました。技術は独学。なんとなく絵を描いたり、木を彫ったりすることでできるようになったって感じです。まずはやってみて、模索するタイプです。

Q.古代生物に惹かれたポイントは?

古代生物の生きている姿は今は見れないですよね。化石から生態を推測するしかない。正解がなくて、自分の想像力を働かせて描いて、夢あっていいなと。

100%正解の型を掘ることが不可能で、多少自分のなりの想像を加えたりする余地がある。そこが楽しいですね。こんな恐竜いたっていいじゃない!みたいな。

Q.阿寒湖で作家を続ける理由は?

たくさんの木彫り作家がいて。そして、藤戸竹喜氏、瀧口政満氏などの巨匠たちの作品が多く残っているんです。それをみながら、見取り稽古しながら彫れる。それも修行になる。良い環境ですね。

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常に計画を逆算して、自分がどういうふうにすればどこまでいけるかを考える
芸術家 小野敬大

広告やブックデザイン、アルバムジャケットやハリウッド衣装をやっている女性に憧れて、本を買ったら衝撃受けた。世界でこんなに活躍している人いるんだと。

そういったデザインをやりたいし、そっから派生して服とかも。材質をこだわらずにもっといろんなことできないかなと探っている。



Q.作品づくりはどこで学んだのですか?

基本幅広い作品の作り方は全て独学でやっています。
木彫りは、中学生の時に地元の作家さんに教わる機会があって。今でも彫刻刀を頂いたり教わったりしています。

Q.間伐材アートはどんな気持ちで取り組んでいますか?

出展を決めた時、自分がとってきたものや、やってきたものを展示してみようと思った。ちょうど写真撮り始めたごろでもあって、それを間伐材と組み合わせた作品を作りました。
額縁に間伐材を使って、阿寒湖の写真を和紙で印刷したものを展示したのが始まりです。今後は様々な表現方法にチャレンジしたいと思っています。

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自分の好きな場所っていうのは自分で作らないと上手くいかないから、自分でやるべきだなって思う。
パフォーマンスアーティスト
TATSUO/山本樹生


自分の中からアイデアが湧き出た時に、その瞬間にできる場所を常に作っておこうと思う。そして、阿寒湖の人たちとアイデアが生まれた時に一緒に楽しむ場所を作りたい。それができれば、あとはもう流れに身を任せて、やりたいと思うことをどんどんやっていくかなぁと。

Q.アーティストとしての活動をはじめたきっかけは?


ぼくはストリートダンサーとして活動しています。ストリートダンスを始めたのは17歳の時。
高校3年生の時に、文化祭でダンスをしていたクラスメイトがブラックミュージックをかけた途端身体が動き始めて...「あ、これ踊ったら楽しいだろうな」思って、ダンスをやっていた同級生に「教えて」といったのが始まりですね。

出身が徳島ということもあって、もともと阿波踊りはずっとやっていたんだよね。踊ることはスゴイ好きだった。
親父がジャズバーをやっていて、黒人の人も常に来ていて。結構すごい人もいっぱいきていて。小さい頃から、そういうのに触れていた機会が多かったんですよね。

ダンスを始めた途端、もう楽しすぎて、一日中ずっと踊っていてダンスのことしかずっと考えていなかったんです。

僕は「ニュースクール」っていうヒップホップをやりたくて、でもそれを教えてくれる人いなくて、いろんなビデオを集めて観て覚えました。
そして、自分でとにかく動いて、知り合いができたら全国どこへでも行くって感じで、常にいろんな所に行ってましたよ。
それが今に繋がっているって感じかな。

Q.阿寒湖に移住しようとしたのは何故ですか?

自分がどこで生きていくかっていうのをずっと考えていた時期があって。世界中いろんな所を訪れて、いろんな所をみて、「ここもいいなあそこもいいな」って探してました。とにかく東京から離れようと思っていたんだよね。やりたいことの方向性変わってきたから、東京じゃなくてもいいなぁって。だったら落ち着くところがいいなと。

北海道には、年に1〜2回は常に来てたんだけど、候補には入っていなかったんだよね。長野とか沖縄とか、離島だとか考えていたんだけど。
阿寒湖で上演されている『ロストカムイ』の演出がリニューアルにするってなって、夏木マリさんが演出で振付がコンテンポラリーに全部なるっていうことで、オーディションをするっていうのを、オーディションの4日前くらいにきいて。面白いなあと思ってオーディションに行ったんですよ。
俺はストリートダンサーだから、コンテポラリーとはまたちょっと表現違うの。でもコンテンポラリー大好きだから、面白そうと思って楽しんでやっていたら、自分が出ることになって。ここで2か月間くらいやったのね、その時、生活をしてみて2週間くらいで「あ、これもう俺住むな」って思ったの。それぐらいしっくり来たんだよね。


Q.阿寒湖に住んでみてどうですか?

観光と大自然を共存させてみんなで生きていこうって決めている場所だと思う。こんなところは他にないと思う。大自然だよ。隣町まで一時間ちょっとかかる。ていう場所なのに、最新の設備があったりだとか、ほんとうに面白い人たちが常に来る場所だったりとか。両立しているんだよね。人間臭さもあるし。だからね、いいんだよね。
アイヌの文化に出会ったら、自分が深めたいテーマに繋がることも分かったんです。住むのも素晴らしいし、舞台もあるし、伝えたいことを伝えられる場所がある。環境的にも最高ですね。